思いの舵取り

年配の方である時期から急激に物忘れがひどくなり、ことある毎に家族から非難され、生きているのが辛いと相談されたことが何度かあります。ついさっきのことを忘れてしまい、繰り返し同じ事を言ったりしたりするので、家族も最初は辛抱強く対応していても、そこは人間ですので限度があり、余りに何度も繰り返されると、身内だけについ厳しい口調で非難の言葉を浴びせてしまうのでしょう。

言われた方は「相手の言葉が胸に突き刺さり、ひどく傷付く」と口を揃えて言われます。忘れてしまう自分が悪いので言われても仕方がないけれど、改めようとしても自分ではどうにも出来ない事だけに、余計に辛いとのことです。

年齢的な物忘れが目立つ方への接し方として、相手に腹が立ち非難したいという怒りの感情が湧いた時に、瞬間的に沸き上がった思いをそのまますぐ言葉にせず、一呼吸置き、「ちょっと待てよ。この感情のまま言葉にしてよいのか?」と自分に問う習慣を身につけることが、己の感情を暴走させずにコントロールする秘訣かと思います。この場合の怒りは己の思い通りにいかない事への反応なので、己を押しつけるのでなく相手を理解しようとする思いが大切です。言うは易く行うはなかなかですが、失敗を繰り返しながらも根気よくこの習慣を身につけて行きたいものです。

うまく出来なかったときは怒りを向けて深く傷つけてしまった相手に「言葉が過ぎました。ごめんなさいm(__)m」と言葉と態度できちんとお詫びしましょう。腹が立っても以前のようにキレずに対応出来たときは、「おー、今回は出来た!」と自分で自分を褒めましょう。そうすれば一層感情をコントロールしやすくなり、さらなる喜びへと繋がって行くことでしょう。私達は何かにつけて自分を卑下することに慣れ過ぎてしまっていますので、出来たときには自分を褒めて喜びを素直に表現し、喜びを感じにくくなるこの悪しき負の思考(卑下)の癖を改めていくことも併せて必要かと思います。