肩こり(胃腸虚弱の方)

肩こりの治療には体操、マッサージ、鍼灸、電気治療、トリガーポイント注射、湿布、内服薬などいろいろとありますが、治療を続けてもなかなかスッキリしないことも多いようです。一口に肩こりといっても東洋医学的には高血圧の方、便秘の方、瘀血(おけつ)の方、胃腸虚弱の方などいろいろなタイプがあり、どのタイプの肩こりかを見極めて治療に繋げていきます。

横になって胃のあたりを叩くと胃の中でポチャポチャと音がすることがあります。この状態を胃内停水といい、その音を振水音といいます。また舌を鏡で見ると白っぽくぽってりとしていて、時に舌の縁に凸凹の歯型がついている(歯痕舌)ことがあります。どちらもからだのなかの水がうまく処理しきれずに停滞している状態と考えられ、元々体質的に胃腸の弱い人にみられますが、胃腸の処理能力を超えて水分を摂り過ぎている人にもみられます。最近はコンビニやスーパーでいつでも飲食物が手に入るため日常的に過飲食気味の人も多く、後者のケースも少なくないようです。肩こりにこの水の滞りが原因のものがあり、このタイプの肩こりには水の滞りをうまく処理してくれる二陳湯や二陳湯の構成成分(陳皮、半夏、茯苓、生姜)が入っている半夏白朮天麻湯、六君子湯、茯苓飲合半夏厚朴湯、二朮湯などが有効です。

水の滞り状態は氣の滞りによってももたらされ、その背景には氣のめぐりを悪くするストレスや運動不足があります。ですから水の滞りの解消にはお薬に加えて適度な運動、気分転換、声を出して笑う、自然の良き氣を取り入れることなどにより氣の流れを整えることも必要です。また水分の摂り過ぎの人は、薬よりもまずその習慣を改める必要があります。人のからだは何でも「過ぎる」と苦しむように作られているのです。

蜂刺傷(アナフィラキシー)

今の時期、アシナガバチが巣作りをしており、植木や洗濯物に潜んでいた蜂に刺されて外来を受診される方がおられます。蜂に刺されたら、直ちに刺された傷口から蜂の毒液を絞り出し(出来れば流水下で絞り出し)、保冷剤や氷で刺された箇所を冷やしましょう。腫れと痛みには塗り薬のステロイド軟膏と内服の抗アレルギー剤(漢方では柴苓湯など)を処方しますが、痛みや腫れが酷い時にはステロイド剤の内服が必要な場合もあります。ただしこれはあくまで刺された箇所の症状に対する治療で、蜂に刺された場合、時に局所症状に加えて全身症状が生じることがあり、注意が必要です。

この全身症状はアレルギー反応の一種で、アナフィラキシーと言われます。アナフィラキシーの症状は比較的軽いものから急激にショックに陥り(アナフィラキシーショック)適切な治療が施されなけれは短時間で死に至るものまで様々です。スズメバチに2回刺されるとショック死する可能性があることはよく知られていますが、これはスズメバチに限ったことでなく、街中で見かける機会の多いアシナガバチでも起こり得ますし、人によっては初めて刺された時にでも起こり得ます。蜂毒に対するアレルギーの有無は、刺されてから一ヶ月以上おいて血液中の蜂毒に対するIgE抗体を測定することにより確かめることが出来ます。

急激な血圧低下、呼吸困難、意識低下を来すアナフィラキシーショックの場合は自ずと救急対応になりますが、そうでない場合は単なる虫刺されとして自宅で様子を見たり、外来を受診して処置と投薬を受け帰宅するケースが殆どかと思います。ですが刺されて数分~数時間以内に体のだるさ、胸苦しさ、吐き気、腹痛、下痢、痒みや湿疹、唇や眼の腫れなどの症状のうちの幾つかが現れた場合、これは軽いものでもアナフィラキシーの症状であり、アレルギー反応の一種とはいえ抗アレルギー剤やステロイド剤では十分な効果が得られず、アドレナリンの注射が必要となります。

またアナフィラキシーの特徴として、一旦治まった症状が後にぶり返すことがあり、その度にアドレナリンの注射を要することがありますので、慎重な経過観察(出来れば観察入院)が必要です。

過去に蜂に刺され上記のようなアナフィラキシー症状を呈した方や仕事上再び蜂に刺されるリスクのある方は、アナフィラキシーショックの予防の為にアドレナリン自己注射薬を常に携帯しておくことをお勧めします(保険診療で処方可)。

アシナガバチはスズメバチにくらべておとなしい性格で、飛んでいるアシナガバチに刺されることは滅多になく、知らずにうっかり手で触れてしまったときに刺されるようです。アシナガバチは庭木の毛虫などを餌にしています。刺されて痛い思いをされた方は腹立たしいでしょうが、彼らが触れた人を刺すのは我が身を守るための防衛手段であり、やむを得ないものです。どの虫も生態系全体の為にその虫にしか出来ない役目を担って懸命に生きていますので、出来れば無闇に殺さず見逃して下さるようお願い致しますm(__)m

水の神

天地(あめつち)をめぐり、あらゆる命を育む水

神とは、命を司る仕組み

生きものみなみな、神の中に生き、生かされている

深山の奥

優婆塞(うばそく)も聖(ひじり)も未だ分けいらぬ 深山の奥に我は来にけり(1885年 松浦武四郎)

山は生き物の命を育む仕組み

この深山の奥は草木、虫、獣たちの住処であり、人がみだりに立ち入る場所ではないと思いますが、山の神にお断りをしてしばしそこに身を置き、穢れなき清き自然の氣に浸ると、身も心も生まれ変わったように蘇る特別の場所です。

うれしたのし生きる(ポンタ)

縁あってうちの庭で生まれ、住み着いた猫達です。部屋飼いと違って冬の寒さは厳しく、外ならではの危険もあり、ときに縄張りに侵入してくる猫やアライグマを追い払うのにも必死ですが、どこへでも自由に行き来でき、肉球で土を踏んで良き地の氣を取り入れ、庭に生えている猫草は食べ放題、飛んできた鳥に狩猟本能を刺激されるなど、外の暮らしならではの楽しみもあるようで、日々うれしたのし生きています。

屋根に登り、電柱の鳩を狙っているポンタ。無理無理(笑)