踵(かかと)の痛みと漢方

歩行中、踵(かかと)の着地時に痛みが生じるものは足底腱膜炎と言われ、立ち仕事や運動などで足底腱膜が踵の骨に付着している箇所に過度に負担がかかることにより発症するものです。起床時の歩き始めに痛みがあり、踵の内側に指で押さえると痛みを生じるポイントがあるのが特徴的です。

一般的な治療としては消炎鎮痛剤や湿布剤が用いられますが、十分な効果が得られることは少なく、足裏を保護する中敷きなどが勧められます。ステロイドの局所注射は即効性がありますが、注射の痛みを伴いますし、針が腱膜を痛める可能性があり繰り返し行えません。

この踵の痛みを訴える方は、下肢から腰にかけて太陽膀胱経という経絡に沿って指で押してみると痛みや違和感を訴えられ、漢方薬では疎経活血湯が良く効きます。大抵の場合、痛みは服用開始から数日以内に取れます(疎経活血湯には地黄、当帰、川弓が含まれており、人によっては食欲不振や胃もたれを起こすことがあります)。

 

胃食道逆流症と漢方

胃食道逆流症とは胃酸が食道内に逆流することにより胸やけや呑酸(どんさん:口の中に胃酸のすっぱさが広がる症状)を訴える病気で、厳密には内視鏡所見から食道内が胃酸により爛れているびらん性胃食道逆流症(逆流性食道炎)と爛れのない非びらん性胃食道逆流症に分けられますが、内視鏡検査なしに症状だけから逆流性食道炎と一括りに診断されていることもあります。

胃食道逆流症の第一選択薬はプロトンポンプ阻害薬(PPI)という胃酸分泌抑制剤で、一般に服用開始後直ぐに症状改善効果が得られます。しかし食道の爛れのない非びらん性胃食道逆流症の中にはこのPPIが無効なものがあり、その場合、漢方薬が有効なことが少なくありません。よく使われるエキス製剤としては半夏厚朴湯、六君子湯、半夏瀉心湯、安中散などがあります。ただしこれらの漢方薬は病名や症状で投与する西洋薬と異なり、同じ症状でも合わない人には全く効き目がなく、患者さんひとりひとりの体質や身体所見に基づいて最も適したお薬を選ぶ必要があります。

またPPIでもこれらの漢方薬でも症状の改善しない難治性胃食道逆流症があり、そのような患者さんは便秘症か、便秘はないという方でも詳しく問診すると排便は毎日だが少量であったり隔日の排便であったりと便秘気味であり、スッキリ快便ではない方が多いようです。こういう方には胃腸の動きと便通を促す目的で大柴胡湯を単独で用いたり、瘀血(おけつ)を伴う場合は桃核承気湯や通導散を上記の六君子湯等と組み合わせることで、難治例であっても便秘傾向の解消に伴い症状の改善が得られることがあります。

そしてこれは毎回しつこく書きますが、ひとのからだは何でも「過ぎる」と苦しむように作られていますので、飲食や喫煙などの生活習慣が「過ぎる」人は、お薬よりもまず過ぎる習慣を改めることが第一です。

 

冷えに乾姜(かんきょう)

生姜を蒸して乾燥させたものは乾姜(かんきょう)と言われ、生の生姜よりもからだを温める作用が強く、冷え症に高い効果があります。作り方ですが、

生姜を薄くスライスし、蒸し器で30~60分間蒸します。蒸す時間は長い方がよいみたいです。

蒸した生姜スライスを日当たりの良い窓際に置き乾燥させます。

生姜スライスの厚みと天気にもよりますが、3~5日でからからに乾燥します。これで乾姜の出来上がりです。完全に乾くと大幅にかさが減り、「えー、たったこんだけなん?」という感じになります。このひとかけらをスープや紅茶などに入れてエキスを飲みます。

この乾姜をさらにパウダーにすると使い勝手がよく、また元の生姜をまるごと食べることになるので、うちではコーヒーミルでパウダーにしています。微粒子のパウダーにするには、生姜を出来るだけ薄くスライスするのと、水分が完全に飛ぶまでからからに乾燥させるのがコツです。乾姜パウダーは鼻粘膜を刺激しますので、皿から保存袋に移し替える際には、くしゃみで台無しにしてしまわないよう慎重に取り扱いましょう。

市販の生姜湯(出来れば黒糖のもの)にこの乾姜パウダーと天日塩(好みによりさらにシナモン末)をそれぞれひとつまみ入れるとからだを温める効果が格段に高まります。さらに吉野葛を少量加えると最強の飲み物となります(^_^)

(*)シナモンは稀に皮膚アレルギーを起こす人がいますので、味や香りが苦手な方は避けた方がよいでしょう。

 

控え目&良く噛む食

感染症が長引いてなかなか治らないとき、治すにはしっかり食べて栄養をつけ免疫力を高める必要があると多くの方が信じ込んでおられますが、栄養失調でない限り、実際はその逆で、食をなるべく控えた方が免疫力が高まり病気が早く治ります。

食べ物の栄養をからだに取り込むには消化吸収の過程が必要で、それには多大なエネルギーを要します。食を控えると消化吸収に費やされるエネルギーが抑えられ、その分エネルギーが免疫の働きにまわされて、からだが感染症の治療に専念出来る状態になるのです。

病気になっても自力で治すしかない野生動物は、病気が自然治癒するまで安全なところに身を潜め何も食べずにじっとしています。本能的にそれが自然治癒力を引き出す最も良い方法であることを知っているのです。

また「噛む」というのは食べ物を消化する一番最初の過程で、胃腸の自動的な消化吸収作用とは異なり、自分の意思で行えるものです。食べ物をよく噛んで唾液と混ぜることにより、胃腸の消化吸収の負担を軽くする事か出来ますので、よく噛むこともまた免疫の働きを十分に引き出す重要なポイントです。

実際、2年間治らずに経過した難治性の足の指の骨の慢性骨髄炎で、専門医が治療は足指の切断しかないと判断したものが、朝食抜き菜食中心の昼夕2食で良く噛んで食べるようにしたところ、その後1ヶ月で綺麗に治り足指を切断せずに済んだ例や、帯状疱疹(帯状ヘルペス)で適切な初期治療にもかかわらず発症1ヶ月後も頑固な神経痛が残り、難治性の帯状疱疹後神経痛への移行が危ぶまれたものが、やはり少食を実行し始めた途端に神経痛が改善しだし、幸いにも後遺症なく治癒した例などがあります。

これから気温が下がると、風邪を引かれる方もおられると思いますが、風邪が長引いてなかなか治らない場合や拗れて気管支炎になってしまった場合は、しっかり食べて栄養をつけるという思い込みを捨て、食をなるべく控えてお腹が空いた状態を保ち、食べるときも一口30回以上良く噛んで食べ、からだを冷やさないように気を付けて過ごされるとよいでしょう。

 

秋分の頃

今年の夏は異常な(人為的な?)猛暑で、暑気あたりや熱中症の方が多かったです。秋分ともなると朝晩は涼しく凌ぎやすいですが、今年は日中の湿気が異常に強く、気温以上に暑く感じる日が多いですね。

元々胃腸の働きが弱い人(脾虚の人)は食べ物や飲み物の水分を体内に取り込んで全身に巡らせる働きが弱いので、胃の中に水が溜まりがちで胃もたれや胸焼けを起こしやすく、取り込まれた水が上半身に滞ると、頭痛、首・肩の凝り、肩関節の痛みとなり、平衡感覚を司る耳の奥の水の巡りが悪くなるとめまいやふらつきを生じます。また下半身に滞った水は浮腫となり冷えの原因にもなります。こういう体質の方は湿気の影響も受けやすく、このところの日中の強い湿気で体調を崩されている方が少なくありません。

さて、いよいよ秋の訪れですが、ヒガンバナはこのあたりの平地では毎年決まったように秋分に咲きます。

庭のヤブランは9月中旬に蕾が出てきます。当院の周辺でも街路樹の菩提樹の根元にヤブランが植えてあり、今綺麗な薄紫色の花をつけています。このヤブランの花の色、何とも言えない柔らかな美しさですね。ヤブランはありふれた野草であちこちに自生していますが、市内ですと阪急岡本駅北側から八幡谷に沿って山道を歩いて行くと谷沿いに群生があり、8月20日頃にはもう咲いています。

今年は雑草の繁殖力がとりわけ凄く、殆ど何もせずに様子を見ていたら普段は草の生えないところまで広がり、庭一面雑草で覆われてしまいました。そこら中で猫草食べ放題になっています=^_^=。蔓延る雑草は毛嫌いされがちですが、緑一面の優しさと虫の音に癒されます。

 

父の死に接して

昨年の夏、当院の初代院長である父が亡くなりました。最期は自宅で私が看取りました。癌の末期で亡くなる1ヶ月前には寝たきりとなり、その頃より喉の奥に痰がへばりついて苦しいと言い出しました。鼻からカテーテルで吸引しても痰の塊などないのですが、一旦喉奥の痰が気になり出すと、何度も何度も繰り返し痰の吸引を求めてきりがなく、私も疲れ果てて父の求めに応じ切れずに「単なる気のせい」と片付けてしまったこともありました。

連日そんな状態が続き疲労困憊していたとき、ふと思い立って、父にあるお薬を試しに飲んでもらいました。するとしばらくして「さっきの薬、効いたみたいや。喉の奥がすーっと楽になったわー」と言ったのです。そのお薬は抗不安薬の一種でした。

71歳の時に最初の癌が見つかった父は、以後3~5年毎に新たな癌になり、亡くなるまでの18年間は闘病生活の連続でしたが、その都度病気を乗り越え、常に前向きに生きていました。ところがある時期からよほど喉が気になるのか、しょっちゅう洗面所へ行っては咳払いとうがいを繰り返すようになりました。家族に心配掛けまいと明るく気丈に振る舞い続けた父でしたが、今から思えばこの「喉の違和感」は「再発への不安」の顕れであり、亡くなる前の「喉奥の痰の苦しさ」は「死への不安」の顕れだったのでした。

父の痰の訴えは、現代医学の知識に縛られた私の固い頭では理解し難いものでした。なので私は死期がいよいよ迫るまで、父の苦しみを理解してあげられませんでした。父の最期に医師として家族として立ち会いながら、表面的にしか寄り添えなかったことが申し訳なく、深い反省の気持ちがあります。他を理解出来るようになるには、まず他を理解しようすることであり、それには、相手の言うことに素直に耳を傾けること、自分の狭い知識だけで物事を判断しないこと、思い込みの癖を外すことであると、この経験を通じて学びました。

亡くなる二日前、身の置き所の無いしんどさに苦しむ父に良くなる見込みがあるのかどうか尋ねられた私は、「もう寿命やと思う」と正直に答えると、「そうか・・・そしたら苦しないようにだけしてくれるか」と言い、傍に寄り添う母に「幸せな人生やった、ありがとう」と何度も繰り返しました。その翌日の午後、緩和医療の最終手段であるドルミカム(鎮静剤)持続点滴により眠りに落ちると、最後息を引き取るまで父が覚醒することはありませんでした。肉体から離れ、ようやく長く辛い病の苦しみから解放された父の表情はとても穏やかでした。

 

自家製の梅干し

庭の梅の実が熟して自然落下したものを取っておき、天日塩で梅干し作りをしてみました。6月下旬から一ヶ月以上塩漬けにし、三日三晩の土用干しで今月5日に出来上がりました。無農薬無肥料の梅で作った自家製の梅干しです。ざるは高知の竹虎さんから購入したものです。食べてみると、昔ながらの容赦ない塩辛さの梅干しでした。おにぎりの芯に入れると最高な感じです。熱中症にも効果抜群かも(^_^)

食品添加物にはくれぐれも気を付けましょう。味や食感、日持ちを良くするために何種類もの人工的な添加物が加えられています。微量と言えども食べ続ければ、からだを苦しめる元となります。加工食品だけでなく店内調理された惣菜や弁当・パン類も、必ず成分表示に目を通しましょう。朝はパンという方は、一度各メーカーの食パンの成分表示を自分の目で確認してみましょう。糖質ゼロやカロリーオフを謳った人工甘味料の食品に飛び付かないようにしましょう。「食の安全」についてひとりひとりがもっと関心を持ちましょう。

 

自然塩 氣のエネルギー

塩分の摂り過ぎは高血圧の原因の一つであり、健康のためには減塩を心掛ける必要があるとされ、厚生労働省の1日あたりの塩分摂取量の目標値は男性8g、女性7gとなっています。実際、健康意識の高い方に普段から減塩を意識されている方が多く見受けられます。

ですが一口に減塩と言っても、制限すべきはイオン交換樹脂法によってつくられた塩化ナトリウム99%以上の「食塩」の摂取であって、マグネシウム、カルシウム、カリウムなどのミネラルを豊富に含んだ自然塩(自然海水塩、岩塩)であればこの目標値を目安にする必要はなく、体質にもよりますが、一般的には1日あたり20gくらいまでは摂っても問題ないと私は考えています。

生きものは皆、氣のエネルギーで生かされており、物質的な面だけでなく氣の面からもからだに取り入れる物の善し悪しを判断する必要があります。減塩生活による慢性的な塩分不足はエネルギー不足に陥りがちですし、今年のような異常な猛暑では熱中症発症のリスクも高まります。自然塩は極めて高い氣のエネルギーを持っており、毎日を元気に過ごすにはむしろ積極的に摂るべき食品と私は思います。

塩分は塩そのものだけでなく醤油や味噌などの調味料から摂ることも多いので、これらの調味料も出来れば天日塩など自然塩で作られたものを選ぶようにしましょう。天日塩は天日に干すことにより塩に太陽の氣のエネルギー(文字通り大きな陽のエネルギー)が加わりますので、さらに高い氣のエネルギーを持つ素晴らしい食品と言えます。

 

口内炎 胃の荒れ

舌や唇に口内炎が出来ると、お茶や汁物など熱いものが滲みて痛いですね。また食事中に舌や唇、口の中などを咬んでしまうことがあり、たいてい一回では済まずまた同じところを咬んでしまいます。咬んで出来た傷はやがて潰瘍になり口内炎と同じ状態になります。何度も同じ所を咬んでしまうので自然に出来た口内炎よりもひどいことが多いです。

どちらの場合も口そのものが悪いのではなく、食べ過ぎによる胃の荒れが根本的な原因です。口内炎や口の咬み傷は、食べ物の入り口である口に傷が出来ることで、痛みによりものを食べづらくして過食や刺激物の摂取を控えさせ、荒れている胃を守ろうとするからだの反応と言えます。ですから口内炎や口の中の傷を治すには、まずは食を控えて胃を休めることです。そうすることで胃の荒れが自然に治っていき、口内炎も消えていきます。

からだは何でも「過ぎる」と苦しむように作られていますので、苦しみが現われたときは、まず「過ぎる」行為を見直してみましょう。

これ、生姜の葉です。芽を出した生姜を庭の水捌けの良いところに埋めてみたら、芽が伸びて葉が出てきました。順調に育てば11月頃に生姜が収穫出来るかも(^_^) 感染性胃腸炎などの吐き気には生姜の絞り汁が割と効きます。

 

胃の病の隠れた症状

胃が悪くなると、普通はみぞおちに痛みや不快感が出ますが、みぞおちには自覚症状がなく、胃の症状が脇腹や胸の乳房のあたりの痛みとして現れ、胃以外の病気と診断されることがあります。

胃炎であれ胃潰瘍であれ、ある程度胃が荒れていると必ず所見として現れる箇所が背骨の肩甲骨の間、正確には第5胸椎棘突起と第6胸椎棘突起の間で、本人が痛みを自覚していなくても、この箇所を押すと必ず痛みがありますので、この圧痛点が胃が荒れているかどうかの鑑別に役立ちます。

胃の不調はお薬の副作用によるものも多く、その代表は消炎鎮痛剤ですが、それ以外にも、最近よく処方されているお薬として、血液サラサラのお薬や骨粗鬆症のお薬があります。

動脈の血栓を予防する血液サラサラのお薬を飲んでいる方は、しばしばみぞおちのあたりが冷えています(手で触ってみると分かります)。これは薬の影響による胃粘膜の血流低下の現れであり、胃の痛みや不快などがなくても、胃が荒れています。

またビスフォスフォネートという骨粗鬆症のお薬を飲んでいる方は、胃の痛みや食欲不振などの症状がない方でも、みぞおちを押すとたいてい痛がられ、上記のように脇腹や左の乳房の下あたりに痛みを訴える方が少なくありません。

このようにお薬の副作用で胃を悪くしていても、一般的な胃の症状が現われない場合があることを知っておいてください。