蜂刺傷(アナフィラキシー)

今の時期、アシナガバチが巣作りをしており、植木や洗濯物に潜んでいた蜂に刺されて外来を受診される方がおられます。蜂に刺されたら、直ちに刺された傷口から蜂の毒液を絞り出し(出来れば流水下で絞り出し)、保冷剤や氷で刺された箇所を冷やしましょう。腫れと痛みには塗り薬のステロイド軟膏と内服の抗アレルギー剤(漢方では柴苓湯など)を処方しますが、痛みや腫れが酷い時にはステロイド剤の内服が必要な場合もあります。ただしこれはあくまで刺された箇所の症状に対する治療で、蜂に刺された場合、時に局所症状に加えて全身症状が生じることがあり、注意が必要です。

この全身症状はアレルギー反応の一種で、アナフィラキシーと言われます。アナフィラキシーの症状は比較的軽いものから急激にショックに陥り(アナフィラキシーショック)適切な治療が施されなけれは短時間で死に至るものまで様々です。スズメバチに2回刺されるとショック死する可能性があることはよく知られていますが、これはスズメバチに限ったことでなく、街中で見かける機会の多いアシナガバチでも起こり得ますし、人によっては初めて刺された時にでも起こり得ます。蜂毒に対するアレルギーの有無は、刺されてから一ヶ月以上おいて血液中の蜂毒に対するIgE抗体を測定することにより確かめることが出来ます。

急激な血圧低下、呼吸困難、意識低下を来すアナフィラキシーショックの場合は自ずと救急対応になりますが、そうでない場合は単なる虫刺されとして自宅で様子を見たり、外来を受診して処置と投薬を受け帰宅するケースが殆どかと思います。ですが刺されて数分~数時間以内に体のだるさ、胸苦しさ、吐き気、腹痛、下痢、痒みや湿疹、唇や眼の腫れなどの症状のうちの幾つかが現れた場合、これは軽いものでもアナフィラキシーの症状であり、アレルギー反応の一種とはいえ抗アレルギー剤やステロイド剤では十分な効果が得られず、アドレナリンの注射が必要となります。

またアナフィラキシーの特徴として、一旦治まった症状が後にぶり返すことがあり、その度にアドレナリンの注射を要することがありますので、慎重な経過観察(出来れば観察入院)が必要です。

過去に蜂に刺され上記のようなアナフィラキシー症状を呈した方や仕事上再び蜂に刺されるリスクのある方は、アナフィラキシーショックの予防の為にアドレナリン自己注射薬を常に携帯しておくことをお勧めします(保険診療で処方可)。

アシナガバチはスズメバチにくらべておとなしい性格で、飛んでいるアシナガバチに刺されることは滅多になく、知らずにうっかり手で触れてしまったときに刺されるようです。アシナガバチは庭木の毛虫などを餌にしています。刺されて痛い思いをされた方は腹立たしいでしょうが、彼らが触れた人を刺すのは我が身を守るための防衛手段であり、やむを得ないものです。どの虫も生態系全体の為にその虫にしか出来ない役目を担って懸命に生きていますので、出来れば無闇に殺さず見逃して下さるようお願い致しますm(__)m

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