胃食道逆流症とは胃酸が食道内に逆流することにより胸やけや呑酸(どんさん:口の中に胃酸のすっぱさが広がる症状)を訴える病気で、厳密には内視鏡所見から食道内が胃酸により爛れているびらん性胃食道逆流症(逆流性食道炎)と爛れのない非びらん性胃食道逆流症に分けられますが、内視鏡検査なしに症状だけから逆流性食道炎と一括りに診断されていることもあります。
胃食道逆流症の第一選択薬はプロトンポンプ阻害薬(PPI)という胃酸分泌抑制剤で、一般に服用開始後直ぐに症状改善効果が得られます。しかし食道の爛れのない非びらん性胃食道逆流症の中にはストレスが関与するなどして、このPPIが無効なものがあり、その場合、漢方薬が有効なことが少なくありません。よく使われるエキス製剤としては半夏厚朴湯、茯苓飲合半夏厚朴湯、呉茱萸湯、安中散、大柴胡湯などがあります(*)。ただしこれらの漢方薬は病名や症状で投与する西洋薬と異なり、同じ症状でも合わない人には全く効き目がなく、患者さんひとりひとりの体質や身体所見に基づいて最も適したお薬を選ぶ必要があります。
そしてお薬だけでなく、飲食や喫煙などの生活習慣が「過ぎる」人は、まずこの「過ぎる習慣」を改める必要があります。ひとのからだは何でも過ぎると苦しむように作られているからです。
(*)胃食道逆流症診療ガイドライン2015(改訂第2版)では、プロトンポンプ阻害薬(PPI)で効果不十分な場合の併用薬剤として六君子湯が推奨されています。実際には六君子湯が有効な例は少なく、ここに上げた漢方薬が適応になる例の方が多い印象です。