こころとことば

昨年の12月に校医をしている小学校で学校保健委員会が開かれ、「心の健康~言葉について」というテーマで子供達が発表しました。子供達は「ふわふわ言葉」と「チクチク言葉」を取り上げ、言葉が心に及ぼす影響についてアンケート結果を基に分かりやすく説明していました。私も校医の立場から話をする機会があり、心とは?言葉とは?という話をしました。

「心」とはからだのように見たり触ったり出来ないので、分かっているようでなかなかうまく説明の出来ないものですが、心の中にあるものに目を向けると、心=思考・感情の容れ物と言うことが出来るのではないでしょうか。そして「言葉」とは心の中に無数にある思考・感情の中からひとつを選んで声にし、外に顕わすことですが、この思考・感情を選ぶ元は「氣」であり、従ってはじめに心があり、心が氣を生み、氣が言葉を生み出すという流れになっています。

子供達が取り上げたふわふわ言葉とは「ありがとう」「よかったね」「大丈夫」「一緒にいよう」などの人を貴び人を思いやる言葉、チクチク言葉は「死ね」「きもい」「じゃま」「ボケ」などの(なかには「死神」とかもありましたが(笑))思いやりの気持ちを欠いた人を貶む言葉ですが、チクチク言葉は相手の心を傷付けるだけでなく、同時に自分の心の中の「人を思いやる気持ち」も傷付けますので、チクチク言葉を口にすればするほど、思いやりの気持ちが薄れていき、知らないうちに人を傷付けることが平気になり、終いにはそれが喜びにさえなってなってしまうものです。チクチク言葉を言われて嬉しい人などいませんので、人が次第に離れていき孤独になっていきます。

反対にふわふわ言葉は、口にすればするほど心の中の思いやりの気持ちを育み、またチクチク言葉を次第に口にしなくなっていくので、人間関係も良くなり笑顔に囲まれるようになります。

保健委員会の最後に教頭先生が言葉をブーメランに例えて子供達に話をされました。人の悪口を言うとブーメランのように自分に返ってきて、いつか必ず人から悪口を言われるというお話でした。言葉は同じ波長のものを引き寄せますので、人を傷付ける言葉を口にしていると、自ずと不運が訪れるという意味でもあるのでしょう。

このように普段口にする言葉が日々目に写る身の回りの景色を生み出ており、言葉はよくよく気を付けて選ばなければならないものであることが分かります。そして普段どのような言葉を選んでいるかは、染み付いた心の癖(氣の善し悪し)によるものです。子供達の発表の中で、「ふわふわ言葉よりチクチク言葉の方が思い付きやすい」という話がありました。これは子供達が普段チクチク言葉をよく口にしている証拠であり、それはテレビ、ゲーム、SNS、周囲の大人達の口から絶えずチクチク言葉を見聞きしている、すなわち悪しき氣を浴び続けているからに他なりません。子供は周りの大人を見て育つもの。私達の責任は重大です。普段何気なく口にしている言葉の癖を、もう一度見直してみる必要があるのではないでしょうか。