除菌・抗菌

菌は不衛生の元であり健康を脅かす悪しき存在として、巷には除菌抗菌仕様の生活用品が溢れ、売れ筋となっていますが、私達は皮膚、口腔内、気道の常在菌や腸内細菌と共存し、お互いに活かし合いながら生きています。私達は細菌に支えられて生きているというこの事実を、ひとりひとりがよく考える必要があるのではないかと思います。薬用、除菌、抗菌と書かれた石鹸、ハンドソープ、ボディーソープを使い続けると皮膚の常在菌を殺してしまい、常在菌が担っている皮膚の免疫機能を損ねてしまいます。

それだけでなく、これらの抗菌石鹸の溶液を含む生活排水は浄水場で一旦処理されますが、その抗菌作用の化学物質は除去されないまま川や海に流れ出て、そこに暮らす生き物達に影響を与えます。川や海の汚染の約7割が生活排水によるものとされています。地球は私達人間だけでなく、動植物や微生物が暮らす場所でもあるのですから、生態系全体への影響を考えて、日常生活のひとつひとつを見直す必要があるのではないでしょうか。生き物を殺し続ければいつかこの地球上からいなくなります。現に一日に約100種、一年間に4万種類もの生き物が地上から姿を消しています。そしていずれ人間も無くなります。

すべてはバランスの上に成り立っています。「悪しき物を徹底的に排除すれば良き物だけになりうまく行く」という思い込みを見直す時に来ていると思います。

 

傷用絆創膏の選び方2(やけど)

やけどの場合も、低温やけどで気付かないうちに皮膚全層や皮下組織までやけどしてしまったものは、見た目が一見汚くなくとも、密閉タイプの保湿絆創膏を貼り続けることで拗らせてしまう場合があります。

熱に焼かれて死んでしまった皮膚・皮下組織には血液が流れていませんので、酸素、栄養、白血球が行き渡らず、細菌が繁殖しやすい条件が整っており、その箇所を密閉してしまうと、細菌感染を引き起こしやすくなります。ですから低温やけどで大きさや見た目の割になかなか治らないもの、普通のやけどで水ぶくれが出来ていつまでも液が出続けて減らないもの、痛みが酷くなってくるものにも、密閉タイプの絆創膏は避けた方が良いでしょう。

傷ややけどが化膿した場合、低栄養状態で十分な栄養補給が必要な方を除いて、しっかり食べるよりも、朝食抜きにするなどして食事を出来るだけ軽く済ましておいた方が早く治ります。

傷用絆創膏の選び方

傷を湿った状態に保ち、かさぶたが出来ないようにして、早くきれいに治す傷用絆創膏が市販されるようになってから、この密閉タイプの絆創膏を貼り続けてかえって拗らせてしまう方を時折見かけます。

犬猫などの動物に咬まれた傷や外で受傷し土や砂がくい込んだ傷は化膿しやすく、この密閉タイプの絆創膏を貼ると、絆創膏の下で細菌が繁殖し、細菌感染を引き起こして傷を悪化させかねません。動物の咬み傷や汚れの酷い傷(水道水で洗っただけでは汚れが取りきれない傷など)を家庭で治療される場合は、通気性タイプの絆創膏が無難です。また傷を消毒液で消毒することは細菌感染の予防にならないだけでなく、傷の治りを妨げてかえって逆効果ですので、見た目の汚い傷であっても水道水で洗い流しながら汚れを拭き取る程度にしておきましょう。動物に咬まれた場合は、すぐに抑えて止血しようとせずに、傷口から出来るだけ血を出すようにしましょう。

傷から臭いのある液が出続けたり傷が赤く腫れて痛みが日毎に強くなる場合は、細菌に感染しています。市販の抗生物質入り軟膏で自宅治療を続ける方もおられますが、感染が傷の周囲や奥に及ぶと塗り薬だけでは間に合いませんし、最近は自宅治療された傷からMRCNSやMRSAなどの抗生物質が効きにくい薬剤耐性菌が検出される事も少なくありませんので、拗れた場合は無理をせず早めの受診をお勧めいたします。

かぜ・インフルエンザ

熱、寒気、鼻水、のどの痛み、咳、だるさなどかぜの症状が起きると、多くの方が市販の風邪薬を飲んだり、熱が高い時はロキソプロフェンなどの解熱鎮痛剤を飲んで対処されています。仕事をどうしても休めない時などは、解熱剤で取り敢えず熱を下げることもやむを得ないと思いますが、風邪薬や解熱剤はかぜの症状を一時的に和らげるだけのものであって、それでかぜが早く治るわけではありません。熱は体温を上げて免疫力を高め病気を治そうとする体の反応ですので、解熱剤で熱を下げ続けるとかえってかぜを長引かせることになります。

毎年この時期になるとインフルエンザが流行りますが、インフルエンザも「流行性感冒」と言われるようにかぜの一種であり、普通のかぜにくらべて症状が強いだけで、何も特殊な病気ではありません。インフルエンザはお薬を飲まなくても数日で自然に治る病気ですので、過度な心配は無用です。
急に悪寒がして高い熱が出、のどの痛み、頭痛、関節の痛み等を伴う時はインフルエンザが強く疑われます。症状がつらくどうしても解熱鎮痛剤を使いたいときには、アセトアミノフェンを1~2回服用する程度にしておきましょう。

冬のかぜやインフルエンザに罹った時は、食事はしばらく水分のみにし、暖かくして安静にし、スマホは手離して出来るだけ睡眠を取るようにしましょう。インフルエンザで高熱が出て汗が出ないときは、厚着をして生姜湯などからだを温める飲み物を飲み、布団にくるまって、じわっと汗が出るようにすると、発汗と共に熱が下がり自然に治っていきます。インフルエンザの漢方治療では、解熱剤のような体温を下げるお薬は使わずにからだを温める作用のあるお薬を使います。お薬も冷たい水ではなくお湯に溶かして飲む方がより効果的です。

病の治し方(自然治癒力)

病を治すのはからだに備わった自然治癒力であり、薬や処置はあくまでその手助けをするためのものです。どんな病も怪我も薬や処置だけで治るものではありません。そして症状=病ではなく、病を治すために現れている自然治癒力の働きとも言えます。ですから熱や痛みなど目先のつらい症状を薬で一時的に抑えるのは、根本的に病を治すことにはならないのですね。

病を治すためにはまず自然治癒力を妨げる行為をすべてやめる必要があります。それには、
①からだを冷やさないこと
②~し過ぎる行為(飲み過ぎる、食べ過ぎる、寝なさ過ぎる、薄着し過ぎる、運動し過ぎる、考え過ぎる・・・)をやめること

③電磁波を極力避けること
④人工的な衣食住を見直すこと
⑤負(マイナス)の言葉を口にしないようにすること

そして自然治癒力を高めるために
⑤よく噛んで食べること(一口50回)
⑥自然の良き氣を取り入れること(自然素材の衣食住、自然と触れ合う)

早寝早起きし、朝陽の氣を吸氣と共に取り入れること
喜び・感謝の言葉を多く使うこと
よく笑うこと(声を出して笑う)
を日々実行するようにしましょう。

手術や放射線治療、画期的な新薬となると、その力だけで病を治しているよう思えるかも知れませんが、からだに負担の大きい治療を受けても時間と共に回復して行くのは、組織修復力や免疫力といった自然治癒力の働きがあるからこそです。逆に自然治癒力を大きく損ねる副作用を持ち合わせた治療法は、表面的にどれだけ治療効果が高く見えても病は完治しませんし、場合によってはそれで命を失うこともあり得ます。

病は氣から

病は氣からと言われ、氣の持ちようによって良くも悪くもなる、負の念(マイナスの思考・感情)に浸り続けると病を作りだし悪くなっていくということですが、氣というのはエネルギーであり、単に心のあり方だけを意味するのではないと思うのです。すべての物にそれぞれ固有の氣があり、日々口にする食べ物、飲み物、着る物、身の周りの物、周囲を取り巻く物(環境)の氣の影響ついても考える必要があります。南方で出来る甘い食べ物は冷やす氣(エネルギー)を持っていて、実際に食べる人のからだを冷やします。自然からかけ離れた人工的な食品添加物、合成繊維、環境汚染物質の氣を毎日取り入れていると、その物質固有の氣の影響を受け、からだも次第にバランスが崩れて病んでいきます。これが本当の「病は氣から」の意味だと思います。有害な物質が心身を蝕むのは、その化学的な作用よるものだけではないという事です。表向き健康に良いとされていても、生態系全体にとって必ずしも良くない物は、氣の面から見ると好ましくない物があります。生薬はその成分の薬理作用だけでなく、生薬の持つ氣が崩れた心身のバランスを整えることで薬効を発揮するものと私は考えています。

からだを冷やさない工夫(食べ物)

からだの冷えは免疫力の低下を招き、万病の元と言われます。これからの時期は特にからだを冷やさないよう注意しましょう。からだを冷やす要因の一つに食べ物があります。熱帯地方などで出来る果物はからだを冷やす作用があり、それを食べて暑い気候の中でも暮して行けるようになっています。例えばバナナは一年中比較的安価で手に入りますが、からだを冷やしますので冬は避けた方がよい食べ物です。砂糖はやはり南方産のさとうきびから作られ、特に白砂糖(精白糖に後から着色したざらめ糖なども同じ)は非常にからだを冷やします。白っぽい色のものは黒っぽい色のものよりからだを冷やします。糖分を摂る場合は黒砂糖か良質の蜂蜜やメープルシロップなど精白してない自然本来の黒や茶色のものを程々に摂ると良いでしょう。甘党の人は常にからだが冷えていますので特に注意が必要です。夏野菜のトマト、きゅうり、なすなども同じようにからだを冷やしますので、今は一年中手に入りますが、特に冷え症の人はこの時期は避けるか、サラダなどで生で食べずにしっかり火を通して冷やす作用を弱めてから食べる方が良いでしょう。旬の物はやはり旬の時期に食べるのが一番です。

からだを温める食べ物は塩、根菜類(人参、ごぼう、生姜、蓮根など)、芋類、発酵食品、暖色系(黒・赤・橙色)の食べ物です。塩(自然塩)はからだを温める作用が非常に強く高いエネルギーを持っています。塩は命の源であり、最近の減塩の風潮は行き過ぎです。色白で胃腸が余り丈夫でなく冷え症の人は減塩などせずに、自然塩(特に天日塩)を味噌、醤油などからも積極的に摂りましょう。からだが温まり元気が出ます。生姜はそのまますりおろすか、薄くスライスしたものを数日間天日干しして(出来れば蒸したあと天日干しするとさらによい)電動ミルで粉末にし、飲み物や料理に加えて毎日摂るとからだがよく温まり、寒さに強くなりますのでお勧めです。生の生姜より干し生姜の方がより温まります。

急病時の食事

風邪や胃腸炎などで食欲がないときには、無理に食べないようにしましょう。「食欲がない」ということは、「今は食べ物を入れないで」というからだからのメッセージですので、食べない方が早く治ります。犬、猫、野生動物は病気になると、自然に治るまで何も食べずにひたすらじっとしています。「消化吸収」というのは多大なエネルギーを要する作業で、急病の時に食べてしまうと、「免疫の働き」に注がれるべきエネルギーがその分だけ「消化吸収」に回されてしまうからです。ですからからだに病気治しに専念してもらうには、水分補給のみにして食べ物は摂らずに過ごす方が良いわけです。外傷の場合も同じ理由で、怪我や傷の化膿などは食事を出来るだけ軽くしておいた方が順調に治ります。「無理をしてでも食べて体力をつける」という思い込みを一旦外して、からだの声に素直に耳を傾けてみませんか。

季節外れの冷え

立夏を過ぎ、日中の気温は平年並みかそれ以上であるのに、朝晩に限っては涼しく時に肌寒いくらいの日が続いていますね。冷えというと専ら冬の寒い時期の症状と思われがちですが、寒気を体内に入れないよう皮膚が締まっている冬の時期よりもむしろ、体内の熱を放散するよう皮膚が開いてくる春以降に、季節外れの寒さに見舞われて寒気が体内に侵入し、冷えによる症状を訴える方がおられます。一見冷えとは縁のなさそうな体格の良い30~40代の男性にも見られます。症状としては背部~腰部の痛み、下肢背側のつっぱるような痛みで、経絡で見ると痛みは太陽膀胱経に沿って現われており、膝裏の委中というツボやアキレス腱近くの大鍾というツボを押すと痛みのあることが多いようです。腰に負担のかかる動作や姿勢が発症のきっかけになることもありますが、その場合でも背景にからだの冷えが潜んでいます。この冷えが原因の腰や下肢の痛みには、消炎作用のある(すなわち体を冷やす)湿布や鎮痛剤は無効かむしろ逆効果で、熱めのお風呂に入ったりカイロ等で温める方が楽になります。漢方治療では体を温める作用のあるお薬を使います。