口内炎 胃の荒れ

舌や唇に口内炎が出来ると、お茶や汁物など熱いものが滲みて痛いですね。また食事中に舌や唇、口の中などを咬んでしまうことがあり、たいてい一回では済まずまた同じところを咬んでしまいます。咬んで出来た傷はやがて潰瘍になり口内炎と同じ状態になります。何度も同じ所を咬んでしまうので自然に出来た口内炎よりもひどいことが多いです。

どちらの場合も口そのものが悪いのではなく、食べ過ぎによる胃の荒れが根本的な原因です。口内炎や口の咬み傷は、食べ物の入り口である口に傷が出来ることで、痛みによりものを食べづらくして過食や刺激物の摂取を控えさせ、荒れている胃を守ろうとするからだの反応と言えます。ですから口内炎や口の中の傷を治すには、まずは食を控えて胃を休めることです。そうすることで胃の荒れが自然に治っていき、口内炎も消えていきます。

からだは何でも「過ぎる」と苦しむように作られていますので、苦しみが現われたときは、まず「過ぎる」行為を見直してみましょう。

これ、生姜の葉です。芽を出した生姜を庭の水捌けの良いところに埋めてみたら、芽が伸びて葉が出てきました。順調に育てば11月頃に生姜が収穫出来るかも(^_^) 感染性胃腸炎などの吐き気には生姜の絞り汁が割と効きます。

 

胃の病の隠れた症状

胃が悪くなると、普通はみぞおちに痛みや不快感が出ますが、みぞおちには自覚症状がなく、胃の症状が脇腹や胸の乳房のあたりの痛みとして現れ、胃以外の病気と診断されることがあります。

胃炎であれ胃潰瘍であれ、ある程度胃が荒れていると必ず所見として現れる箇所が背骨の肩甲骨の間、正確には第5胸椎棘突起と第6胸椎棘突起の間で、本人が痛みを自覚していなくても、この箇所を押すと必ず痛みがありますので、この圧痛点が胃が荒れているかどうかの鑑別に役立ちます。

胃の不調はお薬の副作用によるものも多く、その代表は消炎鎮痛剤ですが、それ以外にも、最近よく処方されているお薬として、血液サラサラのお薬や骨粗鬆症のお薬があります。

動脈の血栓を予防する血液サラサラのお薬を飲んでいる方は、しばしばみぞおちのあたりが冷えています(手で触ってみると分かります)。これは薬の影響による胃粘膜の血流低下の現れであり、胃の痛みや不快などがなくても、胃が荒れています。

またビスフォスフォネートという骨粗鬆症のお薬を飲んでいる方は、胃の痛みや食欲不振などの症状がない方でも、みぞおちを押すとたいてい痛がられ、上記のように脇腹や左の乳房の下あたりに痛みを訴える方が少なくありません。

このようにお薬の副作用で胃を悪くしていても、一般的な胃の症状が現われない場合があることを知っておいてください。

脚の付け根の痛み(鼠径部痛)

脚の付け根の鼠径部(そけい部)と言われる箇所に痛みがあり、脱腸(鼠径ヘルニア)かもしれないと外科を受診すると、痛みだけで脱腸のような膨らみはなく、診察の結果、鼠径ヘルニアではないと言われ、整形外科や内科にかかってもやはり異常なしとされ、結局痛みの原因は不明ということがあります。

鼠径部に痛みのある方は、へその直ぐ横のポイントや鼠径部とへその中間点あたりを押すとを痛みを訴えることが多く、漢方ではこれらは下腹部の瘀血(おけつ)の所見であり、鼠径部の痛みもまた瘀血の所見の一つとされています。

この西洋医学的には原因不明の鼠径部痛に対しては、瘀血を改善する桂枝茯苓丸、大黄牡丹皮湯、桃核承氣湯などの中から、その方の体質に合ったものを選んで処方すると、速やかに改善されることが多いです。

瘀血(おけつ):微小循環障害

下肢外側の痛み(足少陽胆経)

太腿や下腿の外側の痛みやしびれというと、まずは解剖学的に腰椎疾患から生じる症状と考えますが、MRIでは腰椎に異常がないか、あっても症状を来すほどの異常所見がない場合があります。

この場合、痛む箇所を指で押しながら丁寧に確認していくと、脇腹の丁度へそのレベルの箇所、第12肋骨の先端部など決まったポイントにも圧痛があり、十二経絡のうちの「足少陽胆経」と呼ばれる経絡に沿って痛みを自覚していることが多いようです。また「足厥陰肝経」という経絡にある「太衝(たいしょう)」という足の甲のツボにも圧痛を伴い、腹診では肋骨弓直下の緊張(胸脇苦満)、腹直筋の緊張などの所見を認めます。

このような身体所見を認める方に問診で尋ねますと、大抵何らかのストレスを抱えておられます。痛みのある下肢と同じ側の頚部交感神経節にも圧痛を伴っており、ストレスによる交感神経の過緊張状態が自律神経系の調整を担う「肝」の緊張をもたらし、「肝」や「胆」の経絡に沿った痛みとして現れたものと考えられます。この下肢外側の痛みには「肝」の緊張をほぐす芍薬甘草湯や芍薬甘草湯と抑肝散の併用が有効です。

肩こり(胃腸虚弱の方)

肩こりの治療には体操、マッサージ、鍼灸、電気治療、トリガーポイント注射、湿布、内服薬などいろいろとありますが、治療を続けてもなかなかスッキリしないことも多いようです。一口に肩こりといっても東洋医学的には高血圧の方、便秘の方、瘀血(おけつ)の方、胃腸虚弱の方などいろいろなタイプがあり、どのタイプの肩こりかを見極めて治療に繋げていきます。

横になって胃のあたりを叩くと胃の中でポチャポチャと音がすることがあります。この状態を胃内停水といい、その音を振水音といいます。また舌を鏡で見ると白っぽくぽってりとしていて、時に舌の縁に凸凹の歯型がついている(歯痕舌)ことがあります。どちらもからだのなかの水がうまく処理しきれずに停滞している状態と考えられ、元々体質的に胃腸の弱い人にみられますが、胃腸の処理能力を超えて水分を摂り過ぎている人にもみられます。最近はコンビニやスーパーでいつでも飲食物が手に入るため日常的に過飲食気味の人も多く、後者のケースも少なくないようです。肩こりにこの水の滞りが原因のものがあり、このタイプの肩こりには水の滞りをうまく処理してくれる二陳湯や二陳湯の構成成分(陳皮、半夏、茯苓、生姜)が入っている半夏白朮天麻湯、六君子湯、茯苓飲合半夏厚朴湯、二朮湯などが有効です。

水の滞り状態は氣の滞りによってももたらされ、その背景には氣のめぐりを悪くするストレスや運動不足があります。ですから水の滞りの解消にはお薬に加えて適度な運動、気分転換、声を出して笑う、自然の良き氣を取り入れることなどにより氣の流れを整えることも必要です。また水分の摂り過ぎの人は、薬よりもまずその習慣を改める必要があります。人のからだは何でも「過ぎる」と苦しむように作られているのです。

蜂刺傷(アナフィラキシー)

今の時期、アシナガバチが巣作りをしており、植木や洗濯物に潜んでいた蜂に刺されて外来を受診される方がおられます。蜂に刺されたら、直ちに刺された傷口から蜂の毒液を絞り出し(出来れば流水下で絞り出し)、保冷剤や氷で刺された箇所を冷やしましょう。腫れと痛みには塗り薬のステロイド軟膏と内服の抗アレルギー剤、漢方では消風散を処方しますが、痛みや腫れが酷い時にはステロイド剤の内服が必要な場合もあります。ただしこれはあくまで刺された箇所の症状に対する治療で、蜂に刺された場合、時に局所症状に加えて全身症状が生じることがあり、注意が必要です。

この全身症状はアレルギー反応の一種で、アナフィラキシーと言われます。アナフィラキシーの症状は比較的軽いものから急激にショックに陥り(アナフィラキシーショック)適切な治療が施されなけれは短時間で死に至るものまで様々です。スズメバチに2回刺されるとショック死する可能性があることはよく知られていますが、これはスズメバチに限ったことでなく、街中で見かける機会の多いアシナガバチでも起こり得ますし、人によっては初めて刺された時にでも起こり得ます。蜂毒に対するアレルギーの有無は、刺されてから一ヶ月以上おいて血液中の蜂毒に対するIgE抗体を測定することにより確かめることが出来ます。

急激な血圧低下、呼吸困難、意識低下を来すアナフィラキシーショックの場合は自ずと救急対応になりますが、そうでない場合は単なる虫刺されとして自宅で様子を見たり、外来を受診して処置と投薬を受け帰宅するケースが殆どかと思います。ですが刺されて数分~数時間以内に体のだるさ、胸苦しさ、吐き気、腹痛、下痢、痒みや湿疹、唇や眼の腫れなどの症状のうちの幾つかが現れた場合、これは軽いものでもアナフィラキシーの症状であり、アレルギー反応の一種とはいえ抗アレルギー剤やステロイド剤では十分な効果が得られず、アドレナリンの注射が必要となります。

またアナフィラキシーの特徴として、一旦治まった症状が後にぶり返すことがあり、その度にアドレナリンの注射を要することがありますので、慎重な経過観察(出来れば観察入院)が必要です。

過去に蜂に刺され上記のようなアナフィラキシー症状を呈した方や仕事上再び蜂に刺されるリスクのある方は、アナフィラキシーショックの予防の為にアドレナリン自己注射薬を常に携帯しておくことをお勧めします(保険診療で処方可)。

アシナガバチはスズメバチにくらべておとなしい性格で、飛んでいるアシナガバチに刺されることは滅多になく、知らずにうっかり手で触れてしまったときに刺されるようです。アシナガバチは庭木の毛虫などを餌にしています。刺されて痛い思いをされた方は腹立たしいでしょうが、彼らが触れた人を刺すのは我が身を守るための防衛手段であり、やむを得ないものです。どの虫も生態系全体の為にその虫にしか出来ない役目を担って懸命に生きていますので、出来れば無闇に殺さず見逃して下さるようお願い致しますm(__)m

萌え出づる季節

昨年食材として買った自然栽培のかぼちゃの種を取っておき、先月庭の一角を耕し種を蒔いたところ、次々と芽を出し始めました(下のカタバミも芽を出しています)。庭の枯れ葉枯れ草を土に混ぜただけの無農薬無肥料栽培で、今年は果してどんなかぼちゃが出来るでしょうか。

いちじくも葉を出し始めました。最初から小さいながらもちゃんといちじくの葉の形をしています。葉脈の形と根の張り方は似ているそうですね。

時々土に触れましょう。家庭菜園用の土ではなく、山などで自然の土に触れ、本当の自然の良き氣を取り入れましょう。

連翹(レンギョウ)

庭のレンギョウです。桜の開花時期に可愛らしい黄色い花をつけます。実に消炎、利尿、排膿、解毒作用があり、漢方薬として使われています。エキス製剤では荊芥連翹湯(副鼻腔炎)、清上防風湯(にきび)、防風通聖散(肥満、便秘)、柴胡清肝湯などに入っています。

除菌・抗菌

菌は不衛生の元であり健康を脅かす悪しき存在として、巷には除菌抗菌仕様の生活用品が溢れ、売れ筋となっていますが、私達は皮膚、口腔内、気道の常在菌や腸内細菌と共存し、お互いに活かし合いながら生きています。私達は細菌に支えられて生きているというこの事実を、ひとりひとりがよく考える必要があるのではないかと思います。薬用、除菌、抗菌と書かれた石鹸、ハンドソープ、ボディーソープを使い続けると皮膚の常在菌を殺してしまい、常在菌が担っている皮膚の免疫機能を損ねてしまいます。

それだけでなく、これらの抗菌石鹸の溶液を含む生活排水は浄水場で一旦処理されますが、その抗菌作用の化学物質は除去されないまま川や海に流れ出て、そこに暮らす生き物達に影響を与えます。川や海の汚染の約7割が生活排水によるものとされています。地球は私達人間だけでなく、動植物や微生物が暮らす場所でもあるのですから、生態系全体への影響を考えて、日常生活のひとつひとつを見直す必要があるのではないでしょうか。生き物を殺し続ければいつかこの地球上からいなくなります。現に一日に約100種、一年間に4万種類もの生き物が地上から姿を消しています。そしていずれ人間も無くなります。

すべてはバランスの上に成り立っています。「悪しき物を徹底的に排除すれば良き物だけになりうまく行く」という思い込みを見直す時に来ていると思います。

 

傷用絆創膏の選び方2(やけど)

やけどの場合も、低温やけどで気付かないうちに皮膚全層や皮下組織までやけどしてしまったものは、見た目が一見汚くなくとも、密閉タイプの保湿絆創膏を貼り続けることで拗らせてしまう場合があります。

熱に焼かれて死んでしまった皮膚・皮下組織には血液が流れていませんので、酸素、栄養、白血球が行き渡らず、細菌が繁殖しやすい条件が整っており、その箇所を密閉してしまうと、細菌感染を引き起こしやすくなります。ですから低温やけどで大きさや見た目の割になかなか治らないもの、普通のやけどで水ぶくれが出来ていつまでも液が出続けて減らないもの、痛みが酷くなってくるものにも、密閉タイプの絆創膏は避けた方が良いでしょう。

傷ややけどが化膿した場合、低栄養状態で十分な栄養補給が必要な方を除いて、しっかり食べるよりも、朝食抜きにするなどして食事を出来るだけ軽く済ましておいた方が早く治ります。